【お仕事のひとコマ】HIV感染症の無料スクリーニング検査のプレカウンセリング

夏日のような6月某日。検査場所の近くのダイナーのテイクアウト。
思いがけず(失礼!)美味しい!!!と思ったアイスコーヒーで、一息入れてから、4時間で約30名弱と対面。「ようこそ」の気持ちでお迎えしています。

HIV感染症スクリーニング検査に従事して25年程になりました

ふと気がつけば、かれこれ20年以上になった定例業務がHIV感染症の無料スクリーニング検査のプレカウンセリング。

私が入っている検査チームでは、隔月で、お越しいただく対象設定が変わります。
この設定の仕方は、他所ではほとんどないかもしれません。

HIV感染症の現状に合わせて、チームリーダーのドクターが、県の担当部署と話し合い、2018年頃からこのスタイルになりました。

ちなみに、在住地の長野県の事業ではなく、他県の事業です。長野県に住む前からずっと担当させていただいています。


私の担当月は、MSM: men who sex with menと外国人を対象とする奇数月です。
偶数月は、どなたでも対象、です。
この日は、スタッフ配置の都合で、めずらしく私が偶数月にプレカウンセリングを担当しました。

HIV感染症の罹患者が、日本で確認されたのは1985年。
この時、私は看護学生。
日本でHIV感染症は約37年が経過しました。

世界のHIV感染症の歴史では、1971年にアメリカで最初のエイズの患者が診断されました。
それから、51年ほど。


HIV感染症に、関心を寄せ始めたのは1988年頃だった記憶です。
かれこれ、34年ほど。
自分で、もうそんなに経ったのかとビックリします。
少しはお役にたてたことがあったならよいのですが、その実感はあまりありません。

写真は、めずらしく、この日のスタッフと一緒に。
写真を撮る機会はあまりないのですよね。
通訳、兼運営スタッフのみなさま。
ほか、ドクター、臨床検査技師、など、総勢8~10名ほどで運営しています。
長年のおつきあいになりました。
サポーティブでニュートラルな方ばかりで、学ぶことが多いです。

プレカウンセリングはどんなことをしてる?

HIV感染症のスクリーニング検査の流れは、こんな感じです。

◇来所

◇問診票に記載していただく:匿名・記載は任意

◇プレ・カウンセリングのルームへ←ココが私の担当です。

◇採血

◇結果待ちタイム

◇ポスト・カウンセリング:ドクターが結果をお伝え・結果表お渡し。

「プレカウンセリング」とは?

HIV感染症のスクリーニング検査でのプレカウンセリングは、現場のやり方はさまざまだですし、この時間を設定していない検査機関もあります。考え方はいろいろで、間違い、ということではないと考えます。

私が所属するチームでは、プレカウンセリングで、検査の流れを簡単に説明し、結果で「判定保留」の場合の流れや、「ウインドウピリオド」の確認、再検査をお勧めするほうがいい場合はその説明、そして質問があればお受けする、という流れです。

このような内容ですので、「カウンセリング」という言葉から、多くの皆さまが想像するであろう、悩みごとを話す・相談するというイメージとは異なるかもしれません。

検査のインフォメーションと、質問にお答えして、その方なりの安心と納得で検査をお受けいただけるようにする場、というのが合っているように思います。


(専門用語が続いてしまいました^^;;ご関心がある方は、文尾に注釈をつけていますので、そちらをご覧くださいね。)

そして、必要に応じて、結果を伝えるドクターのところで、説明の補足や対応してもらえるように、記録紙に記載して、次の検査に行っていただきます。

予約いただき、検査時刻を設定していますので、そう長い時間をおひとりにかけることができるわけではありません。
とはいえ、リスクが高い場合は、ご本人のお考えをさりげなく確認しつつ、必要な情報を簡潔にお伝えすることもあります。

男性で、性的行為の相手が男性、という方へのプレカウンセリング担当なので、リスクに応じて、A型肝炎やB型肝炎の予防接種があることや、受ける場合のコツ、といったことをお伝えすることがあります。


私個人の姿勢としては、軽やかに、真摯に、ニュートラルに、オープンマインド、を心掛けています。
検査による早期発見や健康管理は大切なことなので、「ようこそ」の気持ちです。

個人差がありますが、特に、初の検査や、心当たりの心配があっての検査では、緊張と不安がありますので、うまく採血が行えるよう、朗らかに柔らかに接するようにしていますが、いい加減な希望的観測は言わないことも重要です。


女性の場合は、20-30代の若い世代が多いですので、時間状況に応じて、女性健診についてお伝えすることもあります。来所した方の言葉を確認することを忘れないようにして、一方的にならないよう気を付けています。

プレ・カウンセリングで感じること


HIV感染症は、今や慢性感染症に位置づけられます。
現時点では感染したことを無くすことはできませんが、治療としては上手く付き合いやすい病気になっています。

かなり前から、HIV感染してから、服薬することで平均余命まで、普通の生活で生きていけますし、死因も統計上で多い脳血管疾患やがん、循環器疾患によることが多くなっています。

感染がわかった時点で、HIV感染症状態からエイズの状態に進行している方も一定数いらっしゃいます。早期発見・早期治療に向けて、なるべく早く感染していることが分かると、対応しやすいので、そのためにもスクリーニングの無料検査が継続無料提供されています。

在日外国人の方々も検査にいらっしゃいます。

私個人の印象ですが、基本知識をしっかり理解している方が多い印象です。それに比して、日本人の方は世代に関係なく、基本的な知識が足りていないと感じることは、10年前と変わらないように感じます。

10年前、というのは、スクリーニング検査に関わった当初の20数年前よりは、教育機関でHIV感染症のことを伝える機会が継続された効果があるように、現場の感触として感じています。

とはいえ、前述のような、日本と海外の違いも感じざるをえない、ともいえるのです。

このことのついて、私は、知らない人が悪いのではなく、機会提供の問題だと思います。

ゆえに、性の行為を止めようとするのではなく、知識を得て選択してもらい、その選択において、生きやすくなるようサポートする、がお役目かなあ、という気持ちで関わっています。


もちろん、よく理解している人もいて、お聞きすると、

学校の性教育で聞いたことがあった、
ゲイのコミュニティでチラシを見て、
友達が検査したから、etc

教育、プロモーション、口コミ、は検査のきっかけになるという現場の感触もあるのです。
継続は力、とも思いつつ。

ほかにも感じていることは多くありますが、それはまたあらためて綴る機会を持てたら、と思います。

検査業務の帰路に視聴した動画に涙して

この日の検査業務を終えて、やや時間がかかる帰路、スマホでショート動画を視聴していました。
たまたま、流れたタイトルが、

『家に帰ったら、彼氏が死んでいました』

チャンネルは「かずえちゃん」

『自分自身のセクシャリティを隠さない「オープンリーゲイ」として
「LGBTQってもっと身近にいるよ」
「あなたは1人じゃないよ」
ということを多くの方に伝えたくYouTubeをメインに2016年から発信活動を行なって』いる方です。

この「かずえちゃん」が、彼を亡くして2年のかたにインタビューした映像でした。

https://youtu.be/gmojLc_lqio

感想は人によって様々でしょうけれど、私には響いて、電車の中で観るんじゃなかった、とジワリと来ました。

そして、こういう動画を高校生くらいからなら見てもらう方が、何かしら心に届くのではないかな〜なんて思ったり。


LGBTQであること、
性的指向や性別を受け止める姿勢、
大事な人の死、
死生観、

いろいろな要素があって、まだ柔らかい心で観てもらって、感じるままに受け止めるだけでいい、という制教育にも伝える映像なのではないかな、と思ったりもして。

現実に、これを学校の先生が、授業で生徒に視聴を、という場合、けっこうハードルが高いのでは?とも思う。教育現場に接していると、そんな感じもあるのだけれど、大学なら1コマ90分あり、結構できるのではないかなあと思ったり。

そんなことも思った業務の帰路でした。

オマケ:通訳さんからのお菓子

この検査業務では、外国語通訳の方々とも、同じスタッフとして、長年一緒に行っています。
タイ語、ポルトガル語、スペイン語など。
ポルトガル語・スペイン語の方は英語も堪能。
ドクターと私も英語対応も。

が、私の場合、年々、なんちゃってEnglish化しているような、、、、。
マズイですねえ、、、と感じる機会でもあります^^;;

さてさて、
この日はタイのお菓子をいただきました。
&カントリーマアムのメロン味も^^

ピーナッツでできていて、きなこの味も?
ほろほろっと崩れる、やわらかいクッキーのような。
ピーナッツの粉でつくった落雁を、もう少しやわらかくした感じです。

懐かしいな〜💕
タイに1カ月間、HIV感染症の研修で滞在した時の匂いや味を思い出しました。

この味から思ったこと。
人がまとう雰囲気で、その場の雰囲気が出来上がっていくように思います。
検査の場の空気は、できるだけやわらかいといいなと思っています。

その空気感があると思うのですが、それは、スタッフみんながまとう雰囲気がゆるっとしているけれど、ちゃんとしている、からだろうか、とあるとき思いました。

淡々と皆で続ける、を続けていきたいと思います。

言葉の補足

【判定保留】
『HIVの検査は、何段階かの検査を行って陰性か陽性を判定します。その過程で陽性と確定できなかった場合を「判定保留」と呼びます。スクリーニング検査(即日検査や郵送検査など)では、陰性の結果は確定できますが、陰性の結果が出なかった場合は本当の陽性かどうか判断がつかないため、判定保留などと伝えられ、その後確認検査を行うこととなります。』


【ウインドウピリオド】
『HIV感染していても、初期にHIV検査をすると検査結果が陰性となる期間があり、ウインドウ・ピリオドといいます。

現在のHIV抗体検査では、HIVに感染してから多くの場合は約1ヶ月で抗体が検出されるようになるため、検査結果が陽性となるのはそれ以降です。また、HIV抗原・抗体検査では早く抗原を検出できるため、検査結果が陽性となるのは抗体検査よりもさらに早いです。しかし個人差があるため、検査機関によっては安全を見てウインドウ・ピリオドを3ヶ月と設定しているところもあります。

感染する機会があってから早めに受検をして陰性と結果が出た場合には、まだウインドウ・ピリオドである可能性もあります。そのため、それぞれの検査機関に設定しているウインドウ・ピリオドの期間を確認し、ウインドウ・ピリオドのあとに再度検査を受けることが必要です。』

出典:HIVマップー安心検査サーチ https://hiv-map.net/anshin/